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スポーツ・ツーリズムとは

  • 執筆者の写真: Kita no Michi 北海道 ドローン撮影
    Kita no Michi 北海道 ドローン撮影
  • 2023年12月6日
  • 読了時間: 7分

スポーツツーリズムとは、スポーツによって楽しみや経済価値を生み出すために、人を移動(旅行・観光)させる取り組みのこと。

観光庁スポーツツーリズムを以下のように定義しています。

スポーツを「観る(観戦)」「する(楽しむ)」ための移動だけでなく、周辺の観光要素や、スポーツを「支える」人々との交流や地域連携も付加した旅行スタイル。

また観光庁は、スポーツツーリズム推進の目指す姿について以下のように掲げています。

スポーツツーリズムを推進していくことにより、新しい旅の魅力を作り出し、交流人口の増加を目指す。 スポーツの切り口で日本の多種多様な観光資源を顕在化させ、インバウンドを拡大する。

身近な例としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 電車やバスなどで移動して他校や他チームと試合をする

  • 好きなチームを応援するために試合を観に行く

  • 他地域主催のスポーツイベントに参加する

観光庁が提唱する3つのスポーツ・ツーリズムの方向性

観光庁におけるスポーツ・ツーリズム(スポーツ観光)の考え方を見ると、インバウンド促進と地域活性化の観点から「観るスポーツ」、「するスポーツ」、「支えるスポーツ」の3つに分類されます。

「観るスポーツ」はビジターの観戦者が周辺地の観光を楽しみ、観光客が競技観戦を滞在プランのひとつに加えることで、旅そのものの充実や各競技の振興、地域活性化を目指すものです。

「するスポーツ」は、マラソンなどの参加者が応援の家族などと一緒に周辺地域の観光を楽しみ、観光客が入浴前の一汗としてテニスなどを楽しむなど、世代を超えて人気を集めるものです。

旅そのものの充実だけでなく、健康の増進やスポーツ施設の有効利用、スポーツ用品・ファッションの需要喚起、地域活性化も目指します。

「支えるスポーツ」は、地域が一体となって携わり、交流人口の拡大や地域活性化、地域・国の観光魅了の効果的発揮を目指すもので、スポーツチームの地域経営や市民ボランティアとしての大会支援、地域や国を挙げての国際競技大会・キャンプの誘致などが挙げられます。

日本に存在する魅力あるスポーツ資源を最大限に活用して、インバウンド拡大や国内観光振興、地域活性化の「起爆剤」となることが期待されています。

スポーツツーリズム 「観るスポーツ」の事例

観光庁が提唱する3つのスポーツ・ツーリズムのうち、「観るスポーツ」の事例を紹介します。

宇都宮市 バスケットボールの3×3大会

2019年に宇都宮市で開催されたFIBA主催「FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Final 2019」は、スポーツ庁、文化庁及び観光庁が共同で募集する「スポーツ文化ツーリズムアワード2020」において、「スポーツツーリズム賞」を受賞しました。

同市のシンボルとなっている宇都宮二荒山神社の大鳥居前にあるバンバ市民広場にコートを特設し、「従来のコートにとらわれない海外からも注目される舞台設定」と評価されました。

オープニングセレモニーや試合の合間には、みこしや居合道といったパフォーマンスを披露したほか、同市の代表的なイベント「宇都宮餃子祭り」や「宮の市」、「MIYA JAZZ IN」を同時開催し、市の魅力を国内外に発信しました。

その結果、「ファイナル」には約7万8,000人が訪れました。

青森県十和田市 「スポーツ流鏑馬」

青森県十和田市では「スポーツ流鏑馬」という競技が盛んで、女性騎士だけの大会「桜流鏑馬」を開催するなど流鏑馬で地域振興があります。

近隣の県だけでなく、関東地方などからも来場者が訪れるイベントとなっています。

流鏑馬自体に参加する競技者は20~30名ほどですが、2018年に開催された「第15回桜流鏑馬」はイベントの2日間合計で約23,000名もの来場者集客に成功しました。

2016年には一般社団法人地域活性化センターが主催する「ふるさとイベント大賞」で最高賞となる「内閣総理大臣賞」を受賞し、2019年には「クールジャパンアワード2019」の一般部門にも選出されました。

日本の伝統や文化をうまく活用したスポーツツーリズムの事例といえるでしょう。

スポーツツーリズム 「するスポーツ」の事例

観光庁が提唱する3つのスポーツ・ツーリズムのうち、「するスポーツ」の事例を紹介します。

浅間山 山が苦手な人をターゲット「トラウマ克服登山」

一般社団法人こもろ観光局は、浅間山付近の町並みや標高を生かした新しい観光プログラムの企画に取り組んでいます。

2017年から実施している初中級者対象のトレッキング・ツアー企画「トラウマ克服!浅間山登山」は、過去の経験から登山に苦手意識を抱いてしまっている人が「初心者向けのユルさ」と「2,000m超えの本格トレッキング」を両立した体験プログラムにより、トレッキングを楽しめるように工夫しています。

本格的登山の敷居を下げることで、登山に対する心理的ハードルが低くなり、多くの参加者から支持されています。

リピーター率の高さにもつながり、首都圏などの遠隔地からも参加者が増えています。

栃木県那須町 サイクリングイベント「ぐるとち」

栃木県で行われているサイクリングイベント「ぐるとち」は、宿泊やコト消費体験などのおもてなしを取り入れながら県内各市町を巡り、同県の魅力を堪能することができます。

通年にわたる観光誘客・地域振興へとつなげ、「自転車先進県とちぎ」としてのさらなる発展や同県のブランド力向上、地方創生の推進を目指しています。

栃木県では、ジャパンカップやツール・ド・とちぎという国際自転車競技連合(UCI)公認の自転車ロードレースなど、県内各市町で多岐にわたるレースやサイクリングイベントの開催実績があります。

県内外のサイクリストを受け入れる環境があり、立地面でも平地と山地のバランスが良く、変化に富んだコース設定が可能で都心からのアクセスも良好となっています。

町民のおもてなしも加わり、全国各地からサイクリストが訪れています。

スポーツツーリズム 「支えるスポーツ」の事例

観光庁が提唱する3つのスポーツ・ツーリズムのうち、「支えるスポーツ」の事例を紹介します。

茨城県鹿嶋 スポーツキャンプ誘致で宿泊増加

2018年1月に誕生した鹿嶋市を中心とするアントラーズホームタウンDMOでは、鹿島アントラーズFCも参加して、海外からスポーツキャンプを誘致しました。

アントラーズがあるためスポーツ合宿やキャンプの誘致実績があることなどを活かし、設立1年目にして2,000泊の新規宿泊を創出しました。

2018年7月には、中国広州から少年サッカーチームの合宿を誘致しました。

選手に同行していた父兄数人は、潮来市の北浦沿いの風景や穏やかな雰囲気に惹かれ、当初予定していた東京への観光をキャンセルして潮来に滞在したということです。

同地域には鹿島神宮や東国三社をはじめ、農業体験施設「なめがたファーマーズビレッジ」や花火大会など豊富な観光資源があります。

スポーツ合宿やキャンプの誘致実績と、それらのスポーツツーリズムと地域にある他の観光資源を結びつけるため、インバウンドのスポーツ合宿を精力的に狙う地域の代表例となっています。

スポーツツーリズムの推進 地域事業者同士の連携が重要

今回紹介したように、中小自治体のスポーツ施設でも、工夫次第では高い施設利用率の実現が可能です。

またスポーツには熱狂的なファンがおり、例えばシーズンに入ると遠征先のアウェーの試合を見に行くような熱心な人も存在します。

またファンは試合のない日は、一般的なツーリストと同じように世界遺産など観光地を訪れることがあります。

スポーツ以外の領域とスポーツを上手く組み合わせることが重要であり、スポーツ外の産業の人々との連携は欠かせません。

スポーツツーリズム推進にあたっては、既存の観光資源がなくともゼロから作れるスポーツイベントは新たな収益源となることを、地域全体で再確認することが求められます。


<スポーツ庁のスポーツツーリズム政策の経緯>

2011年 「スポーツ基本法」の制定(旧スポーツ振興法を全部改正) 「スポーツツーリズム推進基本方針」を策定(観光庁) →スポーツツーリズムの推進に向けた基本的な方向を示し、 スポーツツーリズム推進連携組織の創設を打ち出す 2012年 「スポーツ基本計画」策定(文部科学省) 2015年 スポーツ庁設置 「スポーツによる地域活性化推進事業」開始(地域スポーツコミッション活動支援) 2016年 3庁連携協定締結(スポーツ庁・文化庁・観光庁) 2017年 「第2期スポーツ基本計画」の策定 目標値を設定 ・スポーツ目的の訪日客数(2021年までに250万人) ・スポーツツーリズム関連消費額(2021年までに3,800億円) ・地域スポーツコミッションの設置数(2021年までに170) 2018年 「スポーツツーリズム需要拡大戦略」を策定→アウトドア・武道を新規重点項目に 2019年 武道ツーリズム研究会(「武道ツーリズム推進方針」の策定) 2020年 モデル事業によるスポーツツーリズムコンテンツ形成支援開始 2022年 「第3期スポーツ基本計画」の策定 →地域スポーツコミッションの設置数目標を達成。 「質の向上」重視へ移行

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